人生の大きな分岐点で、何を選択するか
毎年春先になるとフレッシュなリクルートスーツを着た学生を街で見掛ける事も増え、昔のことをよく思い出します。
スーツの馴染み方というか、当時は気付いてなかったですが就職活動中の学生と、そうじゃない人は大抵すぐに見分けがつくんですよね。
ちょっと仕事に慣れてきたサラリーマンのあるあるネタだと思います。
社会で働くという事は思っていた以上に人生の大半を占めていて、学生時代は遠い昔の出来事のようです。
学生生活の4年間と比べて、社会に出て働く期間は10倍以上。とてつもない先の長さに圧倒されつつ、毎日は加速度的なスピードで流れていきます。
社会に出て働くという事は、学生時代にいくら就職した先輩たちと話してみても、なかなか当事者でないとわからないもの。
今回は就職活動においてよく話題に挙がる、「大企業」で働くことについて考えてみたいと思います。
ちなみに私は今、CMもやっている社員数千人以上の大企業に勤めています。
規模としては日本企業の売上高上位50社には入ります。
就職活動はその後の人生の方向性を左右する大きな出来事であることは間違いありません。
互いに働く友人たちとの話の中でも話題になるメリット、デメリットについてお話していきたいと思います。もしご参考になれば幸いです。
大企業で働くことのメリット
1.何より安定している
やはり今の時代においてもこれは間違いないと思います。
世間ではよく「大企業の時代は終わった」とか、「安定なんて幻想」とは言いますが、あくまで一部の側面を切り取った表現だと思います。
大手製薬会社が早期退職を募集、ソニーが危ない、シャープが危ない、連日大企業を取り巻くショッキングなニュースが取りざたされていますね。
もちろん、昔のように大きな会社が業界や特定のビジネスを牛耳るような時代ではないと思います。
ですが、大企業には大企業たるゆえんがあります。会社を大きく成長させ、利益を享受した時代があります。そういった資産は不動産や投資、自社ビル、森林やその他多くの固定資産として今も残っています。
1年、2年赤字になったところで倒産して社員が路頭に迷うことはありません。
また、今でも日本のビジネスを取り巻く環境は、昔ながらの古い付き合いを大事にしたり、大企業のほうがいい仕事をする、という考えから回っている部分もあります。決済や判断を下す人たちは未だに過去の体質のままですから。
そういった意味でも大企業だから仕事が回ってくる、お金が入ってくるという状況はすぐには変わりません。
子会社との依存関係や外注先、得意先との関係も優位です。
IT技術や社会環境がいくら変わっても、大きな視点で見れば急激な変化はすぐには訪れないと思います。
今でも観光地に行けば観光地価格で対して美味しくもない飲食店に数多くの人が訪れ、地域が潤っています。状況はそれとよく似ているのではないかと思います。
2.リストラ、賃金上昇、ボーナス、残業
中小企業の倒産や残業代の未払い、リストラはほとんどニュースになりません。
何故ならニュースにしても関わる人が少ないため、大きな話題にならないからです。
対してソニーやシャープなど有名企業がリストラや残業代未払いをしたら大きなニュースですよね?誰もが知っているからこそ注目度も高く、大企業の変化=大きな時代の変化 という風にキャッチーな話題になるからです。
ですから、マイナスイメージを避けるために大企業は社員に対して自ずと優しくなる傾向があります。
特にボーナスの額は結構変わってくると思いますし、リストラはかなり企業イメージにマイナスになります。
もちろん、残業代の未払いは大手企業でも問題になっている場合もありますし、リストラに近い人事で退社に追い込むケースも耳にします。
また、意図的にニュースにならない話題もあります。このあたりは、ある程度国やマスコミから守られている側面もあるでしょう。
企業のコンプライアンスが重要な話題となる現代だからこそ、大企業であることは労働条件において大きなメリットとなるのです。
3.転職やその後の人生の選択肢が広がる
中小企業から大企業に就職するのはかなり困難です。これはまだ日本の企業文化に残っている大きな問題点と言えると思います。
就職活動でどんなに実力があっても学歴至上主義であるのと同じことです。
そもそも、一部の相当優秀な人でない限り、それほど個々の人間の能力は対して変わりません。もちろん個性はありますが、大企業においては与えられた仕事をきちんとこなすことが何よりも重要だからです。
多くの新卒採用希望者から効率よく優秀な社員を取るためには、学歴で判断するのはある程度仕方のない事です。それと同じく、多くの転職希望者の中から採用を決めるために、前職の会社の規模である程度判断するのは仕方がありません。大半の中小企業勤務者は書類選考で落ちてしまいます。もちろん、これは一般論の話ですが。
つまり、一度中小企業に勤めてから、もっと大きな仕事がしたい、多くの人を動かしてみたい、そう考え方が変わっても選択できる可能性が狭まってしまうのです。
そういった意味で、大企業から中小企業やベンチャー企業に行ける事は可能性としては大いにありえます。
安定を捨てて転職することで情熱をアピールできるかもしれません。しかし逆は難しい。
大企業に新卒で入れば、どちらの人生も歩める可能性が広がります。
大企業の働き方や人間関係を学んでベンチャーでチャレンジする。そんな選択も出来ますよね。
また、結婚や出会いについても同様です。大企業に勤める人を結婚の対象として選ぶ女性は今でもとても多いです。
親戚や相手の家族からの評判も良くなります。これは本人の魅力とは必ずしも比例しませんが、実際間口は広くなりますよね。
また、大企業であればあるほど業務内容は細分化されていて、自分とはバックグラウンドが異なる多くの人たちに出会えます。
刺激になったり、新しい可能性が広がったりするかも知れません。
大企業で働くデメリット
1.やりがいを感じにくい
大きな企業であればあるほど、社会的な責任を果たさなければいけない責務が課せられています。
また、競合他社に追随するため、必ずしも必要に迫られていない多くの仕事があります。人が多ければ多いほど、人事は印象やイメージに左右されますし、組織は硬直化します。政治的な思惑や上層部の出世も若手の仕事内容に大きく関係してくるのです。
そのため、配属された仕事があまりにも意義を見いだせない、やりがいを見いだせない仕事になる可能性は高くなります。
また、多くの社員を効率よく管理するため、あまりに組織的すぎて、仕事内容が細分化されすぎています。
このため、表向きは社会的に大きな貢献をしている企業でも、一人一人の社員は業務を行いながらそれを実感できない事が多いのです。
会社の売り上げや利益に対する自分の貢献度合いはわかりにくくなり、モチベーションが低下していきます。
また、人員が多いため一人一人の社員をきちんと見ることが出来ず、仕事をしない管理職や上司が命令を出すことに耐えられなくなったりします。
ベンチャー企業や中小企業であれば、自分の売り上げ、働き方が会社の行方を左右していきます。
頑張らなければ会社が倒産して路頭に迷ってしまうかもしれない。そんな状況の中で責任感や自覚を養っていくことが出来ます。
もちろん、これは個人の意識の問題です。ただ、人間は楽な方にどうしても傾いてしまうのは否定できませんね。
2.業務の自由度が少ない
業務が細分化されすぎている、という大企業の特徴にも関係していますが、大企業は多くの資本と人員を使い様々な事をしています。
仕事をしていく中で本当に気付いた自分のやりたいことは、すでに誰かがやっている可能性が高くなります。
ピースにあてはめられたような細分化した仕事をしている場合、自分が抜ける事は部や課として損害になりますし、なかなか認められません。更には自分がやりたい業務は他に長く携わっている人が多いので、配置変更を申し出ることは難しくなります。
また、昨今は残業時間や時間管理に厳しい大企業も多く、なかなか自由な動きは出来ません。
更に、業務上の判断における自由度も少ない傾向にあります。
それは、ハンコを押す人があまりにも多いという事です。
1つの決断に対して、リーダーの承認を得て、課長の承認を得て、部長の承認、さらに事業の責任者、役員、社長などなど…多くの人を通さなければ物事は進まないのです。
これは、世代間の違いにより、自分の考えが組織として反映されにくい、実行されにくいという問題点となっています。
また、多くの人に承認してもらうためにプレゼンの仕方や売り込み方、はたまた仕様まで変えていかなければなりません。
上の人に相談するための作戦会議という、まったくもって時間の無駄で意味のない行為も横行しています。
承認する人ごとにその上の上司の評価や考え方がついて回るため、修正やボツが多くなります。
結局、多くの人の意見を取り入れたものは凡庸になるのです。スティーブ・ジョブズの独断がなければiphpneは生まれなかったでしょうし、あの製品はSONYやパナソニックで出すことは無理だったでしょう。日本の大企業独特の考え方が蔓延しているからです。
ポストは確実に減っていく
大企業で働く上で、多くの人を動かせるダイナミックな仕事が出来る可能性があることは大きなメリットです。
しかし、今後は確実に役職やポストが減っていき、出世はより難しくなっていくでしょう。
本人の能力とは関係ない人事があることも大きな問題点です。
これから先、仕事における個人の力への関心度は更に高まってくると思います。今までの大企業至上主義の仕事の依頼の仕方は徐々に減っていき、自由な発想が出来る組織に縛られない人たちへの需要が高まってくるのではないでしょうか。
また、情報技術の発達により、以前は大企業にいなければ知りえなかった情報も、個人が簡単に知りえることができます。
勿論、多くの情報が行き交う現代で、その取捨選択能力は大きなパフォーマンスの差になっていきそうです。
与えられた細分化された仕事をしていた大企業社員より、フリーで働く人やベンチャー企業、中小企業の人たちの能力や適応性の高さも比較されるかも知れません。1つの仕事に対するスピード感もそうです。
そういった意味で、大企業が今までのように利益を享受できる時代は徐々に過去のものになっていき、業績や売り上げの悪化によるポストの見直しはますます加速していくでしょう。昇給や出世への競争はますます厳しくなります。特に、少子化が進む日本がマーケットの中心である内需企業は厳しくなっていくでしょう。
まとめ
・大企業、中小企業のメリットデメリットはそれぞれ2面性があるが、大企業であればその後の潰しが効く場合も多い。人を欲しているベンチャーであれば後からでも可能性はある
・大企業ならではの利益を享受できる時代は徐々に変化しつつあり、自分がどういった働き方をしたいのか、きちんと見つめなおした上で就職活動をする必要がある
参考になれば幸いです。
当サイトでは大企業で働く若手社員にインタビューをしているので、下のタグの「若手サラリーマンの実態」から是非生の声をチェックしてみて下さい。