徐々に肌寒くなるシーズンに入ってきているので、今年から来年にかけてのメンズファッションの流行キーワードや着こなしなどを総まとめし、ピックアップしてご紹介していきます。
ストリートの観測や業界関係者とのトーク、雑誌の傾向、巷の洋服店に並ぶファッションアイテム、SNSの傾向、海外のファッションシーンなどから流行りのメンズファッションを選んでいきます。本質的な部分である「そもそも流行とは何なのか」、「今、どんなファッションブランドがアツいのか」も併せてご紹介。
そもそも流行とは何か
2種類の流行
ファッションに関わらず、流行には大きく分けて2種類の伝わり方があります。1つは『業界や広告会社が主導となるもの』。「今、これが流行っている!」、「次はコレが来る!」と煽ることで真っ先に飛びつきたい人達を扇動し、全く実態のないところから急激に流行を作りあげていきます。雑誌やTV、ニュースメディア、ファッションショーなどがあたります。近年では「ステマ」と揶揄されやすいのがこれ。
もう一つは『ストリート発信』のもの。SNSや口コミで徐々に広がりを見せていき、それがメディアの目に留まることで一気に流行へとのし上がるパターン。こちらもインフルエンサーと呼ばれる人たちに広告費が発生している場合もあり、時によって「ステマ」と言われることがあります。
しかし、どちらが主導のブームにおいても共通するのは「今流行っているいるものを継承していくスタイル(延長線上)」のものか、「全く目新しいもの」であるかどうかが大事となります。通常、流行は緩やかに変化していき、より洗練された方向へとシフトしていきます。その過程で陳腐化や停滞感が起こり、一気に新しいものへと変化する場合もあります。
また、メンズファッションにおいてはレディースで先にトレンドになってから流行するのも最近多いパターンです。
▼メンズファッションが流行する(一般的な)流れ
ファッションブランドがコレクションで提案&雑誌・メディアで紹介(早い人はこの時点で着こなしに取り入れる)⇒海外セレブや人気アーティストが着用⇒国内アーティスト&芸能人が着用⇒一般に広く浸透していき、街や友人、雑誌の特集などで見た人が取り入れる⇒ファストファッションで同じような商品が展開される⇒流行に
流行はたいてい15年~20年周期で繰り返す
音楽やファッションの流行はたいてい15年~20年周期で繰り返すと言われています。これに明確な理由付けを行うのは難しいですが、最近流行したものを例に挙げていくと、「メンズのクラッチバッグ」や「ニットのプロデューサー巻き」、「MA-1」、「スカジャン」、「女性の派手めのメイクやカラータイツ」、「ユニクロブーム」などが挙げられます。どれも90年代に流行したものです。クラッチバッグ(セカンドバッグ)もニットのプロデューサー巻きも2000年代に入り急激に廃れ、ユニクロは2000年代前半にこの世の春を謳歌してから、2002年を機に一度大きな「冬の時代」を迎えています。それから15年余りが経ち、再び脚光を浴びていたんですね。
音楽で言えばEDMがブームになりましたが、これも90年代のハウスブーム、ディスコミュージックブームをより新しく洗練させたものになっているのがわかります。同じく90年代ブームだったパンク、メタルが今、再び復活の兆しを見せています(最近では「ベイビーメタル」が過去の流行から形を変え、世界的人気を博していますね。)
これらの現象は流行のメインターゲットとなる18歳~20代前半の層が完全に社会人になり、流行を作り出す(提供する)側に回っているという「世代交代」と、若い人たちにとって全く目新しいものに見えることも挙げられるかもしれません。流行に乗る若い世代にとっては15年や20年といったスパンは非常に長いものです。
一方で、最近では流行の周期が短くなっていると言われています(情報伝達のスピードと量が急激に上昇し、流行りモノが陳腐化しやすくなったため)。
今から15年ほど前、2000年前後に流行したもの
厚底ブーツ/ミュール/カラータイツ/ユニクロ/レザージャケット、レザーパンツ/ニュートラ(お嬢様、お坊ちゃま風ファッション)/Gジャン/FILA、GAPなどの「ロゴ」ファッション/腰パン/劇場版ポケモン/サザンオールスターズ/キムタク(ドラマ「ビューティフル・ライフ」)/ハリー・ポッターと秘密の部屋(小説)/サントリー「DAKARA」(健康志向ブーム)。
現在のファッションは80年代~90年代のリバイバルと言われていますが、今後5年くらいの間に2000年初頭にブームになったものが再び復活するかも知れません。現在もジワジワ人気を集めているものもありますが、2000年代序盤の流行について一度調べてみるのも面白そうですね。
今、メンズファッションの流行を生み出しているファッションブランドって?
「流行を追いかけないこと」が流行の1つにもなっているほど多様化した現代ですが、ファッション好きを魅了し、今現在の着こなしの流れを作っているホットなブランドをご紹介していきます。これらのブランドのコレクションを多くのファッションブランドやセレクトショップが取り入れ、更に購入しやすいファストファッションブランドが真似ることで一般化し、ブームや人気のアイテムになります。
なお、ノームコアのブームはすでに終了しつつあり、個性的なファッションアイテム、スケーターやスポーツ要素のある着こなしがトレンドになりつつあります。あくまで緩やかに、ですが。
RickOwens(リック・オウエンス)
ショートパンツのレイヤードやダークトーンで統一されたファッション、近未来的なデザインのスニーカーなどを流行させたのはアメリカ人デザイナーが1997年にスタートしたRickOwens(リック・オウエンス)。アンダーグラウンドな文化とラグジュアリーなスタイルを融合させた功績は大きく、近年になってこれまでトップメゾンだったグッチ、ジバンシイ、ディオール、ドルチェ&ガッバーナなどと肩を並べたと言える存在です。
OFF-WHITE(オフ・ホワイト)
2014年にスタートした新興ブランドながら、わずか1,2年で世界中のセレブやファッション好きを魅了し、大ブームを巻き起こしているOFF-WHITE(オフ・ホワイト)。デザイナーは世界的セレブでファッションアイコンのKanye West(カニエ・ウエスト)のスタイルアドバイザーであるヴァージル・アブロー。
アイテムに施されている「WHITE」の文字と、縦に入ったストライプ(バーティカルストライプ)がデザインの特徴。高価なブランドでありながらブランドを身近に感じられる安価な小物類や他ブランドとのコラボレーションなど多彩に展開し、商才も光ります。
VETMENTS(ヴェトモン)
今最もホットと言われているブランドがパリコレ発のVETMENTS(ヴェトモン)です。デザイナーは元マルタン・マルジェラのデムナ・ヴァザリア。
ビッグシルエットのほか、袖の長すぎるTシャツやパーカー、カットオフされたデニムなど、ファッション界に新しい波を巻き起こしています。スキニーデニムのブームをディオール・オムが作ったように、ファッションの「型・スタイル」を変革している非常に影響力の高いブランドだと言えます。
YEEZY(イージー)
世界的なファッションアイコンであるカニエ・ウエストとアディダスが協業でリリースしているファッションブランドYEEZY(イージー)も若者を熱狂させるブランドの一つ。3万円程度のスニーカーが20万円前後で取引されるなど、特にスニーカーが人気のほか、アースカラーを使ったレイヤードスタイルや一見古着や道端で拾ってきた服のように見えるダメージ加工&無地でアースカラーのファッションアイテムのトレンドを生み出しています。
同じくカニエ・ウエストが手掛けているPABLO(パブロ)も入手しづらいファッションアイテムのひとつ。
とんでもない価格で取引されるYEEZYのスニーカーたち。
Gosha Rubchinskiy(ゴーシャ・ラブチンスキー)
ロシア発のファッションブランドとして非常に高い人気を誇るのがGosha Rubchinskiy(ゴーシャ・ラブチンスキー)。ユース・カルチャーをテーマとし、原色系の色遣いや90年代に流行した「FILA(フィラ)」の復刻、タックインや少々野暮ったく見えるシルエットなど、近年のスケーター系ファッションブームに乗り注目度が俄然高まっているブランド。大人が着こなすにはやや難しいものの、近年停滞気味だったファッション界に大きなうねりを生み出しています。
FEAR OF GOD(フィア・オブ・ゴッド)
サンローランやリックオウエンス、YEEZYとともに「ダメージデニム」、「インナーにロング丈をレイヤードするスタイル」、「ヴィンテージ風Tシャツ」、「紐の長いスウェット、ジョガーパンツ」などの大ブームを巻き起こしているのがロサンゼルス発のFEAR OF GOD(フィア・オブ・ゴッド)。
これまでのメンズファッションにおける流行アイテムを更にブラッシュアップし発信するFEAR OF GOD(フィア・オブ・ゴッド)は非常に高額かつ入手がしづらかったものの、H&Mなどファストファッションがデザインを取り入れたことでそのスタイルが大きな広がりを見せています。
この他にもスキニーデニムやショート丈のジャケットを流行させたエディ・スリマンのサンローラン(現在はデザイナーを退任)、スケーター系のPALACE(パレス)、強めなストリートアイテムが揃うマルセロ・バーロン、近年復活しているヴァレンティノ、根強い人気のラフ・シモンズやメゾン・マルジェラ、ゴージャス系のドリスヴァンノッテンなどがホットなファッションブランドとして挙げられます。
国内ではビズビム、サカイ、カラー、Y-3、アンリアレイジ、クリスチャン・ダダなどが注目ブランドとしてよく挙げられます。
全体としてメンズファッションで最もトレンドと言えるのはラグジュアリー系ストリートスタイルと、スケーターファッションです。
ただし一方で、ファストファッションやユニクロ、シンプルなファッションも依然根強い人気です。
メンズファッションの流行キーワード
2016年秋冬-2017年のメンズファッション流行キーワードや着こなしをピックアップ。すでに人気のもの、これから人気になりそうなものを併せてご紹介。着こなしの一部に取り入れてみては!?
刺繍服
90年代に人気だったスカジャンが再びヒット中の現在。特に2016年の春夏から各ブランドよりリリースが相次ぎ、アウターのみならずシャツ、パンツに至るまで刺繍が施されたアイテムが豊富にリリースされています。
ノームコアの流れからシンプルなファッションアイテムが人気だった反動と言えそうで、しばらく人気は続くでしょう。「派手めのファッションアイテム」全体の人気が再燃しつつあります。
デニムよりもスラックスやワイドパンツ、無地のカットソーと合わせて着こなす方がゴテゴテせず今っぽい着こなし方。
切りっぱなしデニム
デニム人気が引き続き継続するなか、これまで主流だった「裾をたるませる」、「ロールアップ」、「9分丈」に加え、あえて裾部分の処理をしていない「切りっぱなし(カットオフ)」で着こなす人が増加中。徐々に愛用者を見かけるようになってきています。
やや裾が短めに、ソックスが見えるくらいの丈でスニーカーやブーツと合わせるのが新しいスタンダードに!?
袖の長いTシャツ&アウター
パリコレ発のファッションブランドVETEMENTS(ヴェトモン)の影響で、袖の長い服の人気が拡大中。
手が完全に隠れるくらいの長さでワンサイズ~2サイズ上げて着こなす人が増えています。キャップややや大きめのパンツと合わせ、ストリートライクにコーディネートする人が大半。袖部分にプリントが施された商品も人気。
MA-1
昨年から引き続きMA-1人気も継続中。防寒性もありシルエットも現代的なタイトフィットのものが増えて来たうえ、価格も比較的リーズナブルな商品が多くコーディネートに取り入れやすいのが要因と言えそうです。防寒性にも優れヨレ、シワになりにくく、雨や汚れに強い素材の商品が多いのも実用的。カーキ、ブラックに続きクリーンな印象の「ベージュのMA-1」にも注目。ブラックやグレーと共にコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょう。
チェックアイテム
ジョガーパンツ、スラックスなど無地でシンプルなファッションアイテムが人気だった流れから、徐々にチェックのアイテムの人気も上昇中。
特に写真上のような格子柄(タータンチェック)の人気が拡大しそうです。アウターやシャツで取り入れる人が多いほか、今まで着用していたスラックスやデニムをチェックパンツにするだけで新鮮な装いになります。
ロックTシャツ&バンドTシャツ
今年の夏はアイアンメイデン、ニルヴァーナ、ガンズ&ローゼス、メタリカなどのロック&パンクモチーフのTシャツが大ヒット。
某雑誌では「音楽知らなくたって着ていいじゃん!」と煽ったことが大きな議論を呼ぶまでに。最近ではパロディ系のバンドTシャツも続々リリースされ、秋冬のMA-1やGジャンのインナーとして引き続き人気を呼びそうです。
VANS(ヴァンズ)
これまで人気だったアディダス・スタンスミスやナイキのスニーカーと合わせ、VANS(ヴァンズ)の愛用者が急上昇中。
特にスリムなパンツでもワイドなパンツでも合わせやすい「old skool(オールドスクール)」に人気が集中しています。レザージャケットからMA-1まで様々なアウターにもフィットする着こなしやすさが特徴。スケーター風ファッション全体の人気度の高さも伺えます。
ネクスト・ブームになりそうなのがアウターウェアを羽織っても大きく露出する「長いべルト」。多くのコレクション系ファッションブランドが2017年春夏のコレクションで使用するほか、「Y-3」などの国内ブランドもロングベルトをリリース中。特にコットン素材のカジュアルなタイプが人気で、こちらもすでに早い人はコーディネートに取り入れています。
着こなしやすいブラックのほか、ミリタリーアイテムとも相性のいい「オレンジのベルト」にも注目。
このほか、スケーターの間では定番の「ベルトループにシューレースを通す」というファッションテクニックも今後見掛けるようになるかも知れません。