流行に左右されない、長く愛用できるベーシックな商品が支持される一方、SNSを通してアイキャッチなファッションアイテムが人気を呼んだ2016年。流行を追いかけすぎることに賛否両論はあれど、人気のテイストをさりげなく取り入れながら自分らしいお洒落を楽しみたいもの。そんな時に役に立つのが国内外のコレクションやルックブックが提案する「トレンド」です。「トレンド」はファストファッションや非コレクション系ブランド・ショップが提案することで広がっていき、現在の流行と緩やかに繋がっていくことで一般的に広がっていきます。一方で「カウンター」という流行とは真逆の流れも生まれ、これが流行と融合していくような形を取ります。
本記事では昨年までの人気アイテムから、2017年春夏のコレクションに見るトレンドアイテム、着こなしなどをまとめています。
2016年流行したファッションアイテムや着こなし、ブランドをおさらい
MA-1
2016年最も流行したファッションアイテムといえばMA-1です。Gooleの検索トレンドでは2015年から500%の検索数増加もあったと報告されるなど、都心部の街中でMA-1を見ない日はないほどの人気でした。
テーラードジャケットやレザージャケットほど手入れや汚れに気を遣う必要もなく、デザインもベーシック、そして多くの商品は中綿入りなので夏以外の季節を問わず愛用できることが人気の要因と見られます。ナイロン素材のため価格も安く、瞬く間にメンズファッションにおける代表的なアウターになりました。
クラッチバッグ
2015年頃からメンズファッションにおいてもクラッチバッグ使用者が激増。もともと荷物の少ない男性は財布、スマートフォン+α程度の収納力があればよく、最低限の持ち物で気軽に買い物や近所への外出が出来ることもメリットでした。
セレクトショップのオリジナルものから、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ルブタン、ジバンシイといったハイブランドものまで、さまざまなバリエーションのクラッチバッグが愛用され、かつてNGアイテムの代表だったセカンドバッグのイメージも払しょくされるまでに。
Wheretoget
クラッシュデニム
サンローランがリリースした事で人気が拡大した膝部分を中心にクラッシュされたデニムパンツも2016年の流行を象徴するアイテム。そしてロサンゼルス生まれのフィア オブ ゴッドがリリースした裾部分にジップが施されシルエットが調整できるタイプのデニムが大ヒット。10万円を超す価格にも関わらず店頭やオンラインストア、オークションで争奪戦が繰り広げられることに。
大手セレクトショップやZARA、H&Mといったファストファッションブランドも同様のデニムを取り入れ、多くの人がコーディネートに取り入れました。デニムに限らず、裾ジップタイプのスウェットやコットンパンツも人気アイテムのひとつになっています。
アスレジャー(スポーツ・ファッション)
アスレジャー・ファッションと呼ばれる、スポーツやワークアウト、レジャー向けのウェアを日常でリラックスして着こなすトレンドが加速。
マウンテンパーカーを始めとした撥水加工のアウターが人気となり、下半身はテクノロジー系のスニーカー、NIKEのテックフリースに代表される細身ながら動きやすいパンツがヒットしました。ライダースジャケットやテーラードジャケットといった、これまで細身のパンツやスラックス、ジーンズを合わせるアウターにもジョガーパンツやフリース・スウェットパンツを合わせる人が出てくるように。
スポーツブランドとファッションブランドのコラボレーションも数多くリリースされました。
ナイキ×ストーンアイランド
アディダスを代表する人気スニーカー、NMD。
ロックTシャツ、バンドTシャツ
ロサンゼルス発のファッションブランド、フィアオブ ゴッドがリリースしたロックTシャツをカニエ・ウエストやジャスティン・ビーバーなどのファッションアイコンが着用したことで大ヒット。メタリカ、ガンズ・アンド・ローゼス、ニルヴァーナといった往年の名バンドのTシャツをバンドの事を知らない人まで着用し、議論を呼んだことも。H&MやZARAなどファストファッションもこれに追随したことで大ブームを巻き起こしました。
カニエ・ウエストのPABLOやジャスティン・ビーバーのPURPOSE TOURなど、ツアー限定のアパレルグッズも入手困難な人気に。このヒットをきっかけに過去好きだったアーティストや、お気に入りのバンドのTシャツを発掘しておしゃれ着として着用する人も増加。
ロング丈インナーのレイヤード
モノトーンカラーやボーダーを中心としたロング丈のインナーをTシャツやニットの下に着用し、レイヤードを見せるスタイルが人気に。
あらゆるファッションでインナーのちょい見せがトレンドとなり、夏場でもレイヤードできるガーゼ素材のタンクトップもリリースされたほど。
こちらも流行の発信元となったのはフィア オブ ゴッドやリックオウエンスといったブランドで、インスタグラムを中心としたファッションの情報を得るツールの人気が拡大したことも要因です。
学生から若手社会人を中心に人気が拡大したユナイテッドアローズのオリジナルレーベル、「モンキータイム」の着こなしやアイテムも人気に。
スカジャン
2015年~2016年は世の中のありとあらゆるブランドからスカジャンがリリースされました。スーベニア・ジャケットとも呼ばれるこのジャケットは米軍の日本統治時代にパラシュート生地を使ったお土産用のお洒落着がルーツ。最近ではMA-1とリバーシブルで着用できるハイブリッドなタイプも登場。「いかにもな」トレンドアイテムのため、全体としてはややデザインが抑え気味のスカジャンに人気が集まりました。
流行のベースとなっているのは「ストリート」
現在のファッション界ではラグジュアリーブランドもストリートのカルチャーを重視し、より消費者が取り入れやすいスタイルを打ち出しています。インスタグラムやWEARを始めとした画像を重視したコミュニケーションツールが人気となり、地方都市ばかりか街に出なくてもお洒落な人の着こなしが簡単にチェックできる時代になったため、よりリアリティのある服・着こなし、ファッションに対するお金の使い方などの情報が広がり、「消費者が有利」な市場になっています。
ストリートファッションも細分化し、音楽・スポーツ・アウトドア・アートほか様々なサブカルチャーを取り入れた多様なスタイルを選びやすくなっています。「ラグジュアリー・ストリート」をいうキーワードも登場し、高級感がありながらキメすぎない、ほどよくラフなスタイルが主流となっています。
この「ラフすぎず、綺麗すぎず」を目指し1994年にスタートしたファッションブランドが、かの有名なSupreme(シュプリーム)です。
2017年春夏ファッショントレンドキーワード
ここからはコレクションの傾向や現在の流行などから見る、2017年春夏のメンズファッショントレンドキーワード、アイテムなどをご紹介していきます。
ビッグシルエット、エクストリームシルエット
パリコレクション発のVETEMENTS(ヴェトモン)が打ち出したオーバーサイズのシルエットが世界的に広がりを見せ、ディオール・オムがメンズのスキニーデニムを流行させて以降の大きなトレンドになっています。手が完全に隠れる長さのロング袖、肩が落ちたシルエットのTシャツなどが人気を呼び、H&Mなど安価でトレンドアイテムを販売するショップでは大きなサイズの服からなくなるという状態になっています。
この「ビッグ・シルエット」がさらに拡大し「エクストリーム・シルエット」まで到達されると言われていますが、現在のところどれほど広がるのかは未知数です。まずはTシャツやパーカー、スウェットなど、取り入れやすいトップスから大きなサイズに挑戦してみてはいかがでしょう。
左)エチュード 右)ヴェトモン
ジュン・ジー
ワイドパンツ
同じ洋服ばかり着ていると飽きがくるものですが、そんな時はトップスやアウターを変えず、パンツとシューズを変えることで新鮮な装いになります。
昨年から各ショップで取り扱いが増えているワイドパンツは、だらしなくなりがちなスウェットなどは避け、タック入りのスラックスなどで取り入れると着こなしやすい。ベーシックにいくなら裾を短めにカットし、ローファーやレザーシューズなどとコーディネートを。
ヨウジヤマモト
バレンシアガ
ウル
ロングベルト
最近着こなしに取り入れる人をしばしば見かけるのがロングベルト。ナイロン素材のカジュアルな素材のものが人気で、ファッション全体の色味を考えアクセントカラーにするか、同化させるかなどそれぞれのコーディネートの楽しみも広がります。
1000円程度の安価で購入できるものから、Y-3、OFF-WHITEといった人気ブランドのものまで、バリエーションも多彩。まずはトップスからチラッと見える程度から取り入れてみては!?
ランバン
オヴァディア&サンズ
レザー素材ではなく、ナイロン地の「ガチャベルト」が人気。
スポーツロゴ
ゴーシャ・ルブチンスキー
主にアメリカを中心に人気が拡大していた、FILAやKAPPAなどの90年代を代表するスポーツブランドのロゴアイテム。これをロシアのファッションブランド・ゴーシャルブチンスキーが2017年春夏のコレクションから展開し、話題に。
古着屋で入手しやすいこともあり、これらのブランドのほかumbroやTommy Hilfigerなどにも注目が集まっています。いかにもなロゴは一過性のブーム感も強いので、安価で入手できるうちに取り入れてみてはいかがでしょう。
アディダスとホワイトマウンテニアリングのコラボなど、スポーツブランドのロゴとしてだけでなく、機能性やテクノロジーが加わった「ファッションブランド+スポーツブランド」のコラボレーションも2017年益々盛り上がりそうです。
アディダス バイ ホワイトマウンテニアリング
ボディバッグ、ポシェット
荷物が少ない人にとっては片手が塞がってしまうクラッチバッグより便利なボディバッグやポシェット。2016年はアウトドアブランドを中心にマチのない薄型のサコッシュが人気を呼びましたが、今シーズンはMCMやジバンシイ、MSGM、ルイヴィトンといったラグジュアリーブランドがボディバッグを押し出しています。
MSGM
定番の「オロビアンコ」などに代表されるような細長い形だけでなく、クラッチバッグがぶら下がったようなタイプ、小さな2つのバッグが連なったようなタイプ、箱形のポシェットタイプなどが展開されています。
ジバンシイ
ルイ・ヴィトン
チェック、ストライプ柄
ラグジュアリーブランドを中心にストライプシャツやスラックスの提案が増加。無地の白シャツや黒・薄いグレーなどが人気だったメンズパンツですが、ストライプも一定の人気が出るでしょうか。
ヴィヴィアンウエストウッドマン
ヴェトモン
サカイ
スーツ以外で見かけることが少なくなったストライプパンツ。大人っぽい雰囲気も出るので、春夏はチャレンジしてみたいですね。
ルチオ バノッティ
ストライプのほか、昨年人気だったシャツを中心に格子柄も目立ちます。
monkeytime
オフ ホワイト
トラックジャケット(ジャージ)
ストリートではスニーカーだけでなくブーツとのコーディネートも見かけるようになった、アディダスのライン入りジャージパンツ。昨年はパンツだけでなく、ビームス、ユナイテッドアローズなどからコラボレーションのトラックジャケットが販売されました。
もともとジャージは1枚でも肩ひじ張らず楽に着れるうえ、トレンチコートやチェスターコート、ジャケットなどドレスよりなウェアとも愛用のいいアイテム。メゾン・ミハラヤスヒロやバーバリー、そのほかケンゾーなどもジャージとアウターを組み合わせたスタイリングを提案しています。
Elle
メゾン ミハラヤスヒロ
スポーツブランドだけでなく、モードブランドや大手セレクトショップなどでも展開され始めているトラックジャケット。このほかイギリスの「JWアンダーソン」ではジャージをレイヤードしているように見えるネックバンドがリリースされ、密かな人気アイテムになっています。
ネイビー・ブルー
「ジャパン・ブルー」として近年海外からも注目を集めていた、コットンやナイロンなどを深みあるブルーに染め上げる「藍染め」。
国内ではBLUE BLUE(ブルーブルー)やKUON(クオン)、Porter Classic(ポータークラシック)などのブランドが糸まで染め上げた独特の存在感で話題になりました。国内の大手ショップなどは春からパステルカラーを中心に押し出すようですが、もともとクラシックスーツでも基本はネイビーと言われるように、今一度このカラーリングを見直してみるのも面白いかも。
ヨウジヤマモト
ルイ ヴィトン
ホワイト マウンテニアリング
ジルサンダー
レインメーカー
2017年トレンド予測アイテムまとめ
ビッグシルエット、エクストリームシルエット
ワイドパンツ
ロングベルト
スポーツロゴ
ボディバッグ&ポシェット
ストライプ&チェック柄
トラックジャケット
ネイビーカラー